板橋フルマラソン振り返り|姿勢治療家が自分の体で犯したミスと、32kmで見えた真実
こんにちは。姿勢治療家®の仲野孝明です。今回は、姿勢治療家の視点から板橋Cityマラソンのレースを振り返ります。

2026年3月15日、板橋Cityマラソンを走りました。
結果はネットタイム3時間59分00秒。グロスタイム4時間00分36秒。サブ4達成です。
ただ、今回はそこを喜ぶより先に、書いておきたいことがあります。
専門家である自分が、自分の体に対していかに甘かったか。
クライアントには絶対にしないアドバイスを、自分自身にしてしまったレースでした。
目次
走る前から、体はサインを出していた
1週間前の葛飾ハーフマラソンが終わった直後から、HRVの振れ幅が大きくなっていました。高い日と低い日が交互に来るような、回復しきれていない典型的なパターン。
咳も出ていました。喘息に近い症状。
花粉の時期、気温の低さ、そこに高強度の有酸素が重なると「アスリート喘息(運動誘発性喘息)」のリスクが上がることは、調べて知っていましたし、レース後に呼吸器を専門とするクライアントの先生に相談しても「そうだったと思います」と言われました。
体は、明確に「今じゃない」と言っていた。
では、なぜ走ったのか。
正直に言います。
ゴールデンウィークの7Days飛脚380kmに向けて、負荷を上げておきたかったから。
気持ちが乗っていなかったのに、目標のために無理やりスイッチを入れようとしていました。
もしクライアントが同じ状態——HRVが乱れ、咳が出て、疲労感が抜けきらない——で「レースに出ていいですか?」と聞いてきたら、私は迷わずこう言います。
「今回は出なくていいんじゃないですか。」
自分には、それが言えなかった。
これが今回の、一番大きな反省です。
レースプランと、実際の崩れ方
事前のプランはシンプルでした。
スタートをキロ6分に設定し、7kmごとに15秒ずつペースを上げるビルドアップ走。
フルマラソンそのものを「有酸素の強化とロング刺激」として使う予定でした。
実際のラップは記録証のデータでこうなっています。
| 区間 | 通過タイム | 区間ペース |
|---|---|---|
| 5km | 30分38秒 | 6:08/km |
| 10km | 59分36秒 | 5:48/km |
| 20km | 1時間55分05秒 | 5:33/km |
| 30km | 2時間47分36秒 | 5:15/km |
| 35km | 3時間18分55秒 | 6:16/km ← ここで崩れた |
| 40km | 3時間47分59秒 | 5:49/km |
序盤は想定より少し早く、キロ5分45秒前後で入りました。
20〜30kmにかけてキロ5分15秒まで上げられており、「もしかしたら思ったよりいけるかも」という感覚もありました。
しかし30〜35kmで一気にキロ6分16秒まで失速。
そして35〜40kmで5分49秒まで戻しています。
数字で見ると、崩れたのは32kmではなく30km以降から始まっていたことがわかります。
そして「切り替え」後に実際にペースが戻っている。データは正直です。
問題は30kmを超えたあたりでした。次のセクションで、その瞬間を詳しく見ていきます。
30kmで起きていたこと——身体の専門家として
「脚が終わった」という表現では正確ではありません。
もう少し丁寧に言うと、こういうことが起きていました。
歩幅が出なくなった。
カロスのラップデータを見ると、これが数字で明確に出ています。
| ラップ | 区間 | ペース | ストライド幅 | 平均心拍 |
|---|---|---|---|---|
| 5 | 20〜25km | 5’17″/km | 104cm | 173bpm |
| 6 | 25〜30km | 5’11″/km | 106cm(ベスト) | 176bpm |
| 7 | 30〜35km | 5’53″/km | 97cm(急落) | 169bpm |
| 8 | 35〜40km | 5’48″/km | 96cm | 173bpm |
ラップ6でベストラップを刻んだ直後、ラップ7でストライドが106cm→97cmに一気に9cm縮んでいます。
心拍数がラップ7で下がっているのは、心肺が楽になったからではありません。
32km地点でいったん止まり、ストレッチを行ったためです。
つまりラップ7のデータには、筋疲労による失速と、意図的に止まってリセットした瞬間の両方が含まれています。
感覚で感じていたことが、データの上にそのまま刻まれていました。
さらに、ピッチとストライドのグラフ、そして左右バランスのグラフを合わせて見ると、この状態がより正確に見えてきます。
ピッチ(オレンジ)は、レースを通じてほぼ一直線に180をキープ。
左右バランス(黄緑)も、50%ラインをほぼ維持し続けていました。
崩れたのはストライド(紫)だけ。
これを姿勢治療家として整理するとこうなります。
右の腓腹筋は、レース以前から組織としてトラブルを抱えていた場所でした。
そこに長距離の負荷が重なり、少し踏み込もうとするだけでつりそうになる状態。
踏ん張れない。だからといって力を抜くと前に進まない。そういうギリギリの状態でした。
一方、体幹と骨盤は最後まで保持できていた。
だからピッチは180のまま崩れず、左右の重心バランスも50%を維持し続けた。
しかし、股関節を引き上げるエネルギーが切れていた。
足を前に運ぶ力がなくなり、踏み込むこともできない。
姿勢は保てていた。でも、足が前に進んでいない状態。
構造(姿勢の骨格)は最後まで生きていた。(体幹保持力)
しかし燃料(股関節を動かすエネルギー)が切れた。
そして末端(右腓腹筋)には、事前からのトラブルが残っていた。
この3つが重なった結果が、30km以降の失速でした。
臨床でも、まったく同じような問題が起きることがあります。
全体の姿勢は崩れていないのに、特定の部位だけが過剰な負担を受けている。
局所の症状と、姿勢全体の崩れは、切り分けて診る必要があります。
(ケースによってはつながりますが。)
今回のレースは、改めてそれを自分の体で実感しました。
トイレ休憩で起きた「切り替え」の正体
30km過ぎで一度止まり、トイレで顔を洗いました。
足に水をかけ、全身を少しストレッチして、背伸びをしました。
そして頭の中でこう決めました。
「今日の練習はここで終わり。残りの10kmはただジョグして帰るだけ。」
その瞬間から、また走れるようになりました。
フィジカルとメンタル、両方に変化が起きていたと思っています。
まずフィジカルの面。
30km以降の失速の根本は、当日の体調に対してオーバーペースになったことで、股関節を動かすエネルギーが枯渇したことだと考えています。ミトコンドリアを使い切ってしまった状態、といえばわかりやすいかもしれません。
そこでいったん止まり、ストレッチをしたことで、固まっていた筋肉が緩み、血流が回復した。
血液が周り、股関節がまた動き出した。それが終盤に少し走れた理由だと思っています。
そしてメンタルの面。
「頑張らなくていい」と決めた瞬間、交感神経優位の緊張状態から、副交感神経が少し入ってきた。力みが抜けると、体はより動きやすくなる。
フィジカルの回復があり、メンタルの切り替えがある。
この両方が揃って、はじめてまた走れたのではと。
どちらか一方だけでは、あの終盤の立て直しはなかったと思っています。
力みが抜けると、体は動く。
仲野整體の姿勢治療でも、まったく同じことが起きています。
力で姿勢を作ろうとするクライアントほど、体が硬くなってしまいます。
「ゆるめる」という意図が入った瞬間に、姿勢が整いやすくなります。
そして、姿勢とは肉体の姿勢だけではありません。
精神の姿勢と、肉体の姿勢。両方が整ってはじめて、人は前に進むことができる。
レースの30km地点で、自分の体で体験してました。
花粉の時期に、屋外で高強度をかけることのリスク
レース後も、呼吸が苦しい状態がしばらく続きました。
夜には喘息に近い症状がありましたが、熱がなかったことで、風邪ではなくアレルギー性の反応だとわかりました。
花粉症がある方にとって、春の時期の屋外での高強度運動は、思っている以上に体への負担が大きいのですね。
呼吸量が増えるほど、花粉の吸入量も増える。
当たり前なのですけどね。
特に、気温が低い日は気道が過敏になりやすく、喘息症状が出やすいとのこと。
そこにもともとのアレルギー体質が重なると、リスクは三重に。
走力ではなく、
土台である免疫力が落ちている時期に、高強度をかけることの怖さ。
これは、花粉症の方が外で運動する際に、ぜひ知っておいてほしいことです。
収穫——今の自分の「有酸素域」が見えた
反省だけでは終わりません。
今回のレースで、はっきりと確認できたことがあります。
カロスのデータでは、平均ペース5’36″/km、平均心拍168bpm、トレーニング焦点は「有酸素」と出ています。
この日、もっとも楽に感じたペースはキロ5分45秒前後でした。
ラップ1・2のデータを見ると、ストライド95cm・心拍156〜159bpmで安定して走れていました。
苦しくなく、会話ができるかできないかくらいの、いわゆる有酸素ゾーン。
今の自分にとって、5分30秒〜5分45秒が無理のない巡航速度だということが、42kmを通じてデータとして確認できました。
調子が悪いときは、自分が快適に感じる、感覚を大事にしようと改めて学べました。
今後の練習設計において、これは大きなヒントになります。![]()
40回以上のレースを経て、見えてきたもの
15年で、フルマラソンを含むスポーツ大会に48回以上出場してきました。
最近、思うことがあります。
練習量と結果が、以前よりもダイレクトに比例するようになってきた。
若い頃のように「なんとなく走ったら走れた」が、通じなくなってきています。😆
もしかすると、自分のピークや限界というものが、少しずつ見えてきているのかもしれません。
これは悲観ではありません。
「使い方の歴史」が、体に刻まれてきている。
どう使ってきたか、どう休ませてきたか、どう向き合ってきたか。
それが今の体の状態に、正直に出てくるようになりました。
マラソンは正直ですね。
ごまかした分は、必ず最後に返ってきます。
そして、それは姿勢も同じです。
今日の姿勢は、今までの人生の使い方そのもの。
未来のためにも、毎日の姿勢を気をつけてなければ、急に姿勢が変わることはありませんから。
私も気をつけます!
まとめ
今回の板橋フルマラソンで学んだことを、整理します。
身体の専門家でも、自分には甘くなる。
HRVが乱れ、咳が出ていても、「目標のため」という理由で無理をしてしまった。
クライアントには絶対にしないアドバイスを、自分に対してしてしまったこと。
体は正直にサインを出している。
そのサインを読む技術を持っていても、読もうとしなければ意味がない。
力みを抜いた瞬間に、体は動き出す。
30kmで経験したこの感覚は、臨床での「姿勢が整う瞬間」と同じメカニズムだと感じています。
失敗したレースでした。
でも、自分の体で得た経験は、必ず臨床に還元できます。
次の春は、花粉と強度と体のサインを、もう少し丁寧に扱いながら走ります。
結果:ネットタイム3時間59分00秒 / グロスタイム4時間00分36秒(種目順位559位 / 年代別順位1158位)

レース後に初めていただいた「松のや」さん
浮間公園は綺麗な公園でした。
仲野孝明|姿勢治療家® / 仲野整體東京青山
「姿勢が変わると、人生が変わる。」






















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