外反母趾・足の痛み・股関節術後でも「歩ける」が戻る:70代女性の経過記録(2025年10月〜11回目)
姿勢治療家(R)の仲野孝明です。
最近の臨床シリーズを作ってみました。
目次
この記事はこんな方のためのケーススタディです
- 外反母趾が長年あり、靴が合わず歩くのがつらい
- 股関節の手術後、左右差や違和感が残っている
- 階段(特に下り)が怖い/手すり側で動きが変わる
- 背骨の曲がり(側弯など)を指摘され、背中の痛みや疲れやすさがある
- 「年齢のせい」で片付けず、根本から整えていきたい
治療方針:初めての方へ
結論:このケースで「効いた」方針はシンプルでした
**足(靴・足趾)→骨盤(座り方)→背骨(呼吸と回旋)**の順で、
「土台から」積み直したことで、歩行と日常動作が戻ってきました。
来院の背景:2025年10月に初回来院(Aさん・70代女性)
主な困りごと
- 長年の外反母趾
- 右股関節は一年前に人工関節の手術を実施済み
- 背骨の曲がりがあり、背中の痛み・疲れやすさ
- 歩き方の癖を周囲から指摘されていた
- 時間帯で症状が変動(朝は歩けるが、午後に悪化など)
初回時点の見立て(ここが「根本」の入口)
この時点で重要だったのは、「痛い場所」より先に
**『体がそう使わざるを得ない理由』**を拾うことでした。
- 左右の股関節の使い方がズレる → 階段や歩行で露骨に差が出る
- **足の環境(靴の適合)**が崩れる → 体全体が代償でねじれる
- 骨盤が崩れる → 背骨はさらに曲がって見える/負担が集中する
治療の設計図:このケースの優先順位
1)足=「土台」を作り直す(靴・足趾・足首)
Aさんは過去にオーダー靴でも合わず、靴を諦めかけた経験がありました。
ここで転機になったのが、「足の指、本来の動きができる」靴の選択です。
- 靴の選択と足の可動域改善
- 足趾(指)の機能を戻すアプローチ(動き・感覚・スペーサーなど)
- 歩行中に崩れる“いつもの癖”を減らす(テーピング等)
2)骨盤=「姿勢のハンドル」を握り直す(座り方・立ち方)
背骨が曲がっている方ほど、実は最初に効くのは背骨を頑張ることではなく、
骨盤から体を起こすことです。
- 座位で「骨盤から起きる」
- 立位で「まっすぐ立てる感覚」を増やす
3)背骨=「結果」を整える(呼吸・回旋)
背骨まわりは、固めるよりも 呼吸と伸展・回旋動作で“動ける状態”に戻します。
良い姿勢で呼吸をするだけでも整える最小の運動になります。
経過:初診〜11回目(時系列)
初回(2025/10/14):土台の崩れを特定し、方針を固定
- 股関節手術歴・背骨の曲がり・歩行の癖が絡み合っている状態
- 「痛い場所当て」ではなく、足→骨盤→背骨の順で整える方針へ
<臨床メモ>
Aさんは、かなり昔から足の変形がありました。
子どもの頃から 足指を曲げ込むような靴で歩行していた時代があり 、20代にはすでに外反母趾が出現。最近は、正座でも外反母趾の出っ張りが痛い。
大事なのはポイントは、
Aさんが本当に困っていたのは「足の形」よりも、歩くと背中が痛くて不自由になることでした。
股関節(人工関節)の手術歴もあり、
「手術したら背骨も良くなると思ったのに…」という落胆もありました。
体重も軽く(発言上は40kg台の話題があり)、筋肉の“緩衝材”が少ないことも負担要素でした。
<初回で行ったこと>
- 外反母趾を「矯正」ではなく “使える足に戻す” と定義
- 足の接地が崩れて、骨盤〜背骨に負担が逃げている前提で再設計
- テーピング(ただ固定ではなく、荷重が戻る方向に)を実施
- 足指・足部の使い方の観察(やりすぎると逆効果になることも含めて説明)
初診時のゴールはこれでした。
「足で踏める」→「骨盤が安定する」→「背中が守られる」
2回目(2025/10/22):刺激量を調整しつつ、姿勢の再学習
- 体に入れる刺激が強すぎると逆に負担になるため、“適度に効く量”に調整
- 壁を使うなど、体をまっすぐに感じる練習がをスタート
<臨床メモ>
2回目の診療は、初診から1週間後。
テーピングの刺激が強く感じたり、皮膚がかぶれそうな話も出ました。
この段階では、理想論ではなく現実対応が必要です。
- 皮膚が負けるなら無理をしない(休む・貼り方を変える)
- 足部の“使っていない筋肉”にスイッチを入れて、踏ん張りを作る
- 足が支えると、背骨(特に腰椎)の負担が減る、という説明
ここで出た重要ワードが、まさに根本です。
「背骨を悪くさせないために、骨盤から曲げる」
座位や日常動作で、背骨を直接いじるのではなく、骨盤主導へ切り替えていきました。
3回目(2025/10/28):冷え・足趾の動き・骨盤位置がテーマに
- 足趾を動かす(握る/広げる)ことで循環と感覚を戻す
- 骨盤位置が変わると、全体の曲がり方が変わる(=背骨は結果)
<臨床メモ>
Aさんはテーピングをほぼ毎日実施。
「全然違います」という反応がありました。これは良い兆候です。
ただし、皮膚が弱い場合は“続け方”が命です。
夜は休む、貼り方を工夫するなどで、続けられる形に調整します。
この回は、歩行や立位のチェックが増えました。ポイントはこちら。
- 足が支えると、お腹(体幹)に力が入りやすい
- 体幹が入ると、歩行中のブレが減る
- 座り方は「ここです(骨盤から折る)」に集約して復習
生活の中で意識することを整理しながら、
足→体幹→背骨の順に「働くルート」を通し直していきました。
4回目(2025/11/04):足趾スペーサー×靴下問題=「現場のリアル」
このあたりから、臨床の価値が出るところです。
小さな課題がたくさん出現しますが、一つ一つ解決していきます。
「理屈は正しい」だけだと続かない。生活で回らないと意味がない。
- 足趾スペーサーを靴下に入れる工夫
- 5本指靴下だと厳しい、足袋型が現実的…など“継続可能性”の調整
- 左足首が「ガクッ」となる感じ、歩行の不安定さも拾い直し
<臨床メモ>
足指の間に入れるスペーサー(タイミング・靴下問題)をチェック。
5本指ソックスや薄手ソックスの工夫方法をお伝えしました。
足指を1本ずつ動かす/曲げる/伸ばすなど、細かく行うべき動作を指導。
靴の中で足が冷える問題など、生活の現実に合わせて調整します。
この段階で大事なのは、鍛えるより先に 「動かせる」状態を取り戻すこと。
足指は“力”ではなく、“操作性”が回復の速度を決めます。
5回目(2025/11/11):階段の課題が明確化(上りOK・下りが怖い)
- 痛みや不安は「動作」で正体がバレます
- 下りで出るのは、筋力だけでなく 股関節と骨盤の使い方、バランス能力など多岐にわたります
<臨床メモ>
この回は一度、痛みの波が来ています。
右は良くて歩きやすい。でも左に、毎年出るような痛みが出現。
しかも施術後〜翌朝に強く出現しました。
ここでの対応が、根本治療として超重要です。
- 「良い運動」でも、負荷量が合わないと痛む
- 体が変わる途中は、左右差や“置き去り部位”が出る
- 痛みの場所を責めず、負荷のかけ方(量・タイミング)を修正する
多くの人はここで迷走します。
「悪化した」と思ってやめてしまう方、根性で押してさらに悪化させる方。
基本をしっかり押さえ、
波を“調整して乗り越える”という、回復の王道に入りました。
7回目(2025/11/25):宿題が「下り階段に効く形」へ
- 会話で、つま先立ち(カーフレイズ系)の話が出てきます
- 下りに必要な支持性を、日常で積み上げる方向へ
<臨床メモ>
初診から1ヶ月半が経過。
この頃には、座位が安定してきています。
座っても腰が痛くない、調子が良い、という流れ。
今回のケースで座位はかなり重要でした。なぜなら、座り方が崩れると立位・歩行にも必ず影響するからです。
- 骨盤から起こして座る
- 呼吸で固めすぎず、必要な安定を作る
- 背骨を“守る使い方”が日常に入ってきました
8回目(2025/12/02):歩行が明確に改善「止まらずに来られた」
- 「駅から歩くと途中で止まる感じ」が減り、休まず来院できた
- ぐらつきも減ってきた
→ これは派手じゃないけど、生活の自由度が上がる“本物の改善”です。
<臨床メモ>
今回までの間が、一つの大き節目になりました。
Aさんは「久しぶりに駅から家まで歩けた」
さらに「休まずに、今までで一番早い速度で歩けた」そうです。
背中が痛くて歩けなかった状態から、
背中の痛みが出ずに歩ける状態へ。
まだ「形はおかしい」「前のめりになる」など課題は残っています。
でもこれは、改善としては正しい順番です。
先に「痛みが減る」「歩ける」が戻り、その後にフォームが整っていきます。
10回目(2025/12/23):調子が良い週の中で、左股関節に急に痛みが出る
- 足はかなり良い一方で、左股関節が急に痛む波が出る
- こういう時に重要なのは「戻った」ではなく、何がトリガーかを一緒に探すこと
(生活動作・冷え・座り方・歩行量など)
<臨床メモ>
靴の話をお伝えしました。
ALTRA(アルトラ)の話題を出し、ベアフット・指先が広がること・ゼロフラット・伸びやすさなど、かなり具体的に「足にとって必要な要素」を整理しました。
ここで重要なのはブランドではなく、構造です。
- 外反母趾部分が当たらない“足先形状”
- 広がり(足幅)を許す設計
- 紐やファスナーなど、フィット調整ができる構造
- 季節(冷え)も含めて「続けられる靴」を選ぶ
靴は医療でもトレーニングでもなく、生活の土台そのものです。
だからこそ、合えば人生が変わります。
11回目(2026/01/07):靴が決定打+階段で“左右差の正体”が見える
- 靴が合い始めて、足の状態がさらに安定
- 階段の下りで「手すりの側(右/左)でスムーズさが変わる」
→ これは 左右の股関節・骨盤の使い方の差 が、動作に出ているサインです。 - 右肘の痛みも話題に(次なる隠れた課題が出現)
<臨床メモ>
年明け、Aさんはこう言っています。
- 足は「全然出てない(悪化してない)」
- 靴が「人生で初めて良かった」
- オーダー靴を2回作ってダメで、去年全部捨てた過去がある
- なのに今回は合った
ここが、本当に大事なポイントです。
「合う靴がない」は、才能や運ではなく 評価の視点がズレていることが多いだけです。
シューフィッターは「靴を合わせるプロ」ですが、必ずしも「歩き方・体の使い方」まで深く見ているとは限りません。
だからこそ当院では、人間本来の歩き方に土台を戻した上で、歩きを邪魔しない靴を選ぶという順番を大切にしています。
その結果、「人生で一番ラクな靴」に出会える確率が上がります。
さらに、階段の降り方で面白い観察も出ています。
左手すりだと痛いのに、右手すりだとスムーズ。
これは 身体のねじれ・荷重の癖 が、日常動作で露呈しているサインです。
そして、足が安定してきたからこそ、別の問題が“見えて”きました。
- 左股関節の違和感(状況で出たり消えたり)
- 右肘の痛み(箒で掃く動作など、夏頃からの話)
これも、治療の価値が出てくると出現するポイントです。
足が崩れている間は、他の痛みは埋もれます。
土台が整うと、次に改善すべき層がはっきりしてきます。
良くなったから、次が見える。
人間の自然治癒力による回復というのは、そういうものです。
このケースの「根本改善」を作った3つの鍵
1)靴が変わると、足が働き、全身がラクになる
Aさんは過去にオーダー靴でもダメだった経験があり、
今回「合う靴」に出会ったことが大きい転換点になっています。
2)骨盤から起こすと、背骨は“悪化しにくい形”に落ち着く
背骨を頑張って伸ばすより、骨盤の位置を戻す方が再現性が高い。
これが日常の姿勢を変えていきます。
「姿勢が変わると、人生が変わる」まさにその瞬間です!w
3)階段(下り)は、体の使い方のテスト
下りで崩れるのは「弱いから」だけじゃありません。
支えにくい状況、バランス感覚、筋力低下が重なると、怖さや痛みとして出ます。
だからこそ、股関節と骨盤の使い方(足はもちろんです)が重要になります。
おまけ:「良くなったら次が見える」は正常(悪化ではない)
初めの症状が良くなったら、次なる症状が出てきて驚かれる方もみえます。
人間は一番辛いところや痛いところ以外が気にならないように“プログラム”されています。
順番に改善して、何もない状態まで整えていきましょう。
自宅での宿題(このケースで実際に指導した内容の一部)
足趾:握る・広げる(短時間でOK)
- 指を「握る」「広げる」を繰り返す
- 冷えや感覚の戻りに関係しやすい
靴下×足趾スペーサー:続く形に落とし込む
- 理想論より「続く形」
- 靴下のタイプ選びも含めて、現実運用に合わせる
下り階段のための支持性:つま先立ち系
- やり方は個別調整が必要ですが、“つま先立ち”
壁に向かって、姿勢良く両足を平行に立ち、踵を垂直に上げて、ゆっくり降ろします。これだけの動作ですが、ふくらはぎのトレーニングになります。
寝ている時に膝が当たって痛いなら:タオル1枚
- 横向きで膝が当たって痛む場合、クッション(タオル等)で緩衝
- 「骨と骨が当たっている」問題は、これで改善することが多い
同じような症状で困っている方へ:セルフチェック
次のどれかに当てはまる人は、この症例と原因構造が近い可能性があります。
- □ 外反母趾があり、歩くと疲れる/痛い
- □ 靴が合わず、オーダーでもダメだった
- □ 足の痛みだけでなく、背中や腰も痛い
- □ 股関節の手術後、歩き方が崩れた気がする
- □ 階段や手すりの使い方で痛みが変わる
- □ 階段の下りが怖い(登りは平気)
このうち複数が当てはまるなら、痛い場所だけでなく
足→骨盤→背骨の順で見直す価値があります。
・日本整形外科学会「外反母趾」解説
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hallux_valgus.html
・国立長寿医療研究センター「転倒予防セルフチェック」
https://www.ncgg.go.jp/hospital/news/20171222.html
・AAOS(米国整形外科学会)Bunions(外反母趾)解説
https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases–conditions/bunions/
まとめ:派手じゃない改善が、人生の自由度を上げる
このケースの本質は、
「足が良くなる」=「歩ける」だけではなく、
日常の移動と選択肢が戻ることでした。
外反母趾、股関節術後、背骨の曲がり。
条件が重なっても、順番を間違えなければ体は変わります。
ご来院をご検討の方へ(注意点)
本記事はあくまで症例の紹介で、状態は人により異なります。
痛みが強い・しびれがある・急に悪化する場合は医療機関の受診も含めてご相談ください。
「自分も近いかも」と感じた方は、まずは “いまの体の使い方” を一緒に整理しましょう。
初めて姿勢治療家を知った方は、ぜひポッドキャストやYouTubeなどでまずは様子を見てください。
本気で治したい方は、こちらから。
よくある質問(FAQ)
Q:外反母趾は治りますか?
A: 形だけをゼロにする発想より、痛みなく歩けて、悪化しにくい “使える足”に戻す 方が現実的で、生活が変わります。
外反母趾を形で捉えるのではなく、使える外反母趾に変えていきましょう。
手術をして後悔している方もたくさん拝見してきました。できるのは、今ある身体を最大に生かす使い方です。
人間には未知なる可能性があります。諦めない姿勢があればできることは無限にあります。
Q:テーピングはずっと必要ですか?
A: ずっと固定するためではなく、**正しい荷重を覚えるための“補助輪”**として使います。皮膚状態や生活に合わせて調整します。
自分で巻けるように指導します。もし巻けない場合は、他の方法を一緒に考えていきます。
Q:靴は何を買えばいいですか?
A: ブランド名ではなく、**足先形状・幅・フィット調整・季節(冷え)**まで含めて、続くものを選びます。合う靴は“体を守る道具”になります。
生活環境に応じて、購入できる場所や種類はアドバイスしております。
新しい靴の情報や気になっている靴があれば、診療中にご相談ください。足の形状、現在の骨格に合わせて考えられる最善のアドバイスを致します。
Q:良くなったと思うと戻るのはなぜですか?
A: 必ず原因があり、結果があります。悪くなる時には「悪くなる使い方」をしています。
一緒に身体の骨格構造を考えながら、改善策を探していきましょう。
要点まとめ(3行)
- 外反母趾・足の痛みは足だけの問題ではなく、靴・足趾の機能低下→骨盤の不安定→背骨の負担という連鎖で悪化しやすい。
- この症例では **足(靴・足趾)→骨盤(座り方)→背骨(呼吸と回旋)**の順に「土台から」整えることで、歩行と日常動作が回復していった。
- 改善が進むと、次の課題(股関節の左右差・肘の痛みなど)が見えてくるのは正常で、“悪化”ではなく回復の階層が上がったサインである。
要点まとめ(箇条書き)
- 対象:外反母趾/足の痛み/股関節術後/背骨の曲がり/階段(下り)の怖さがある70代女性
- 重要所見:靴が合わない・足が靴内でズレる/足趾が使えない/骨盤が崩れる/背骨に負担が集中
- 介入:荷重が戻るテーピング、足趾の操作性回復、骨盤主導の座り方、呼吸と回旋で背骨を固めない
- 変化:駅から休まず歩ける/背中の痛みが出にくい/階段で左右差の正体が見える/次の課題へ移行
- 自宅課題:足趾の握る・広げる、靴下×スペーサーの継続設計、つま先立ち系、膝が当たるならタオル






















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