2026-07-02

トレイルランナーが夏アルプスの山小屋泊で背負う全装備【商品名つき】

はじめて山小屋に泊まるとき、何を持っていけばいいのか。 この記事では、トレイルランニングのスタイルで夏のアルプス(3000m級)の山小屋に1〜2泊する場合の持ち物を、アルトラやファイントラックといった実際に使っている商品名まで含めて全部お見せします。初心者の方がそのまま真似できるように、「何を持つか」だけでなく「なぜそれを選ぶのか」まで書きました。山小屋泊の持ち物に迷っている方は、まずこの一式を土台にしてください。

山小屋泊トレランで実際に背負う装備一式を広げた写真

夏のアルプス・山小屋1〜2泊、トレランスタイルの全装備。これ全部がRUSH 20に収まります


目次

「山小屋泊、何を持っていけばいい?」という質問によく出会う

「山小屋に泊まってみたいんですけど、何を持っていけばいいんですか?」

最近、こういう質問をよくいただきます。トレイルランニングを始めた方、これからロングの山を歩いてみたい方。気持ちはすごくよく分かります。僕も38歳で走り始めて、はじめて山に泊まったときは、ザックの前で1時間くらい固まっていました。何を入れて、何を置いていけばいいのか、まったく分からなかった。

あれから砂漠を250km走ったり、330kmの山岳レースに出たりと、ずいぶん極端なところまで来てしまいましたが(笑)、装備の考え方の芯は、はじめての山小屋泊のときから変わっていません。むしろ、いろいろ削ぎ落としていった結果、「本当に要るものは案外少ない」というところに戻ってきました。

「これを買えば間違いない」というより、「なぜこれなのか」が伝わるように書きました。最後は自分なりに足したり引いたりして、あなたの一式をつくっていってください。


まず、荷物を「3つのかたまり」で考える

細かい持ち物リストに入る前に、いちばん大事な考え方を。

荷物は、こうやって3つに分けて準備すると、ぐっと迷わなくなります。

  1. 行動着 ── 歩く・走っている間に着るもの
  2. 山小屋での衣類 ── 泊まる・休むときに着るもの
  3. 帰路の衣類 ── 下山したあとに着るもの

ポイントは、レインウェア上下とアクティブインサレーション(行動用の防寒)は「行動着」に入れるということ。雨の中でも寒い稜線でも、僕らは歩き続けるからです。「防寒着=休むときのもの」と思っていると、行動中に寒くて動けなくなります。

そして、ここが軽量化のキモ。行動着は、基本ずっと同じものを着続けます。 何泊しても、歩いている間に着る服は替えない。汗で濡れても、行動中はどうせまた汗をかくので、替えてもきりがないからです。

替えるのは、行動着以外の2つ。山小屋着帰路着です。そしてこの2つは、見事なまでに用途が違います。

なぜなら、山小屋は「冬」、下界は「夏」だから。夏のアルプスでも、山小屋の夜は真冬並みに冷え込みます。一方、下山すれば下界はうだるような真夏。山小屋で着込んだ防寒着を、下界でそのまま着られるわけがないんです(笑)。 だから山小屋着(冬仕様)と帰路着(夏仕様)は、それぞれ別に用意することになります。

  • 行動着……ずっと着続ける1セット(替えない)
  • 山小屋着……冬の寒さに耐える、乾いた防寒の一式
  • 帰路着……真夏の下界で着る、涼しい一式

ただし、帰路に着る一式だけは、絶対に濡らさない。これだけは徹底してください。理由はあとで書きます。

この3つのかたまりが頭に入ったら、あとは中身を埋めていくだけです。


1. 身につけるもの(ウェア・シューズ)

シューズは「防水じゃない」トレランシューズ

トレランで使用するアルトラのオリンパスとモンブラン

左がオリンパス、右がモンブラン。用途で履き分けています

まず足元から。僕は アルトラ(Altra) を愛用しています。いちばん使っているのは オリンパス(Olympus)。クッションが厚く、長い時間歩いても足が疲れにくい。走るときはモンブラン(Mont Blanc)を選びます。用途で履き分けていますが、どちらもアルトラらしいゼロドロップ(つま先とかかとが水平)で、自然な姿勢で足を運べるのが気に入っています。

ここで初心者の方がよく迷うのが「防水の靴のほうがいいですよね?」という点。いいえ、僕は防水じゃないものをおすすめします。 トレランでは沢を渡ったり、雨でどのみち濡れます。防水靴は一度中まで水が入ると、その水が抜けずに、ずっとびちゃびちゃのまま。これが本当に不快で、足のトラブルの元になります。

大事なのは「乾く」ことではありません。正直、行動中に完全には乾きません。大事なのは、水に浸かってびちゃびちゃになったままにならず、適度に水が抜けてくれること。非防水のメッシュなら、濡れても水がすっと抜けて、「湿ってはいるけど、びちゃびちゃではない」状態に落ち着きます。これくらいなら、走るのにも歩くのにも困りません。

「濡れない」を目指すのではなく、「濡れても水が抜ける」を選ぶ。これがトレランの発想です。

肌に直接着る「ベースレイヤー(ドライレイヤー)」がいちばん大事

意外かもしれませんが、汗冷えを防ぐいちばんのカギは、シャツではなくその下に着る薄い肌着(ドライレイヤー)です。

ファイントラック(finetrack)ミレー(MILLET/通称あみあみ) のドライレイヤー。これは僕の中でマストです。肌に直接着て、汗を素早く肌から離してくれる。汗が肌に残ると、止まった瞬間に一気に冷えます。山で体を冷やすのは本当に危険なので、ここはケチらないでほしい。

ちなみに、このあと「ベースレイヤー」という言葉が出てきますが、ベースレイヤーとは肌着の層のこと。そこに該当する商品が、このドライレイヤーです(ファイントラックやミレーのもの)。つまり、ベースレイヤー=ドライレイヤーと考えてOK。一方で、次に出てくる速乾シャツやTシャツは、厳密には「中間着(ミッド)」にあたります。肌に直接着るのがベースレイヤー(ドライレイヤー)、その上に重ねるTシャツからが中間着、という区分けです。

その上に重ねるのが、スポーツ用(ラン・登山用)の速乾シャツ。これが中間着(ミッド)の一枚目になります。普段着の化繊でも最低限OKですが、できればスポーツ用のほうが汗の抜けが段違いで快適です。

それと、Tシャツはトレランメーカーや登山メーカーのものを選ぶと、腕の動きを制限せず、リュックを背負ったときにも縫い目が肩に当たって邪魔になりません。普段着のTシャツとは、立体的な作りがまるで違います。綿(コットン)は全部NG。 乾かず、冷えて、重くなる。Tシャツも下着も、綿は山に持っていかないでください。

ボトムスは「ストレッチが効く」もの

トレランは動きが大きいので、伸びるパンツかショーツを。ランニング用か、ファストハイク用がおすすめです。

選ぶ基準は、軽量で、かつ繊維が強いもの。岩や枝に擦れても破れにくい生地だと安心です。乾きやすい素材ならなお良し。そして伸縮性はマスト。これは絶対に外せません。短パンであっても、伸縮性がないと足を高く上げたときに引っかかって、登りで一歩ごとにストレスになります。ジーンズやチノパンが論外なのは言うまでもありません。

具体的には、山と道(YAMATOMICHI)の5-Pocket Shorts は、僕の周りでも友人の多くが愛用しています。動きやすくて、ポケットも実用的だと評判です。ベーシックなものなら、パタゴニアのバギーズ(Baggies) でも構いません。定番で手に入りやすく、間違いのない一本です。それと、いま僕が気になっているのが マイルストーンのファストトレイルショーツ。軽さと動きやすさが評判で、次に試してみたいと思っています。

靴下は「ドライマックス」推奨

地味ですが超重要。ドライマックス(drymax) の靴下を強くおすすめします。

さっき靴のところで「濡れても水が抜ければOK」と書きました。その「湿ってはいるけど、びちゃびちゃではない」状態を快適に走り続けるために効いてくるのが、この靴下です。ドライマックスは水を素早く抜いて足を蒸れさせにくいので、靴の中が多少湿っていても、足がふやけてマメになるのを防いでくれる。非防水のシューズと、水の抜ける靴下。この組み合わせがそろって、はじめて「濡れても気にしない」が成り立つんです。

ほかに タビオ(Tabio)のレーシングランプロ を使うこともあります。せっかくいい靴を履いても、靴下で足が終わると山行そのものが終わります。ここも綿はNG。

行動中の防寒は「3層構造」で考える

トレランの行動着レイヤリング基本3層(ドライレイヤー・Tシャツ・ウインドシェル)

基本の組み合わせ。肌側からベースレイヤー(ドライレイヤー)、中間着にTシャツ、アウターにウインドシェル。寒い日はミッドにアクティブインサレーションを重ねて分厚くします

ここはトレランの肝なので、少しだけ丁寧に書きます。

行動中の防寒の基本は、3層構造(レイヤリング)です。肌に近いほうから並べると、

  1. ベースレイヤー ── 肌に直接着る肌着。ここに該当するのがドライレイヤー(ファイントラック等)
  2. ミッド(中間層) ── 保温を担当する層
  3. アウター ── 風や雨を遮断する、いちばん外側

この3つを、寒さに応じて組み合わせたり、脱いだりして温度調整します。

ポイントは、真ん中の「ミッド(中間着)」で寒さを調整すること。さきほどの速乾シャツやTシャツも、このミッドの一枚目です。そして「Tシャツかアクティブインサレーションか」と択一で考えるのではなく、ミッドには、Tシャツもアクティブインサレーションも入ります。寒くなるほど、ここに重ねて中間着をぶ厚くしていくイメージです。それほど寒くない夏の行動中ならTシャツ1枚、冷え込めばその上にアクティブインサレーションを足す。ミッドの厚みで、ぐっと体感が変わります。

しっかり冷えると予想されるときは、アウターをゴアテックスの3層レインに、ベースレイヤーを厚手に、ミッドにアクティブインサレーションを重ねる。これでかなりの寒さに耐えられます。

実はこの3層構造、夏のアルプスでも、エベレスト登山でも、考え方はまったく同じです。ベースレイヤー・ミッド・アウター。この3つの役割は、どんな山でも変わりません。変わるのは、真ん中のミッド(中間層)が分厚くなるかどうかだけ。エベレストではミッドがぶ厚いダウンになる、ただそれだけの違いなんです。だから今ここで3層構造を体に染み込ませておけば、この先どんな山に行っても応用が効きます。覚える価値のある、一生モノの原則です。

ミッドに重ねる「アクティブインサレーション」の選び方

冷えるときにミッド(中間層)へ重ねる保温着が、アクティブインサレーションです。僕がいちばん使うのは、オクタ(OCTA)素材のベストタイプ。体幹だけ温められて、腕の動きを邪魔しません。

次に使うのが、長袖のジッパータイプの化繊。ジッパーで開け閉めして温度を細かく調整できます。具体的には、ノースフェイスならベントリックス、アークテリクスならアトムシリーズあたりが定番です。OMMのコアシリーズも、トレラン界隈で評価の高いアクティブインサレーション。軽量で動きながら着られるので、選択肢に入れる価値があります。

行動中の「すばやい温度調整」グッズ

トレランの温度調整に使うアームカバー・バフ・手袋・ウインドシェル

サッと出して体温を整える小物たち。ファイントラックのアームカバーには何度も助けられました

歩きながらサッと体温を整えるために、こまかい防寒小物が効きます。

  • アームカバー ── 僕は ファイントラックのアクティブスキン®アームカバー を使っています。これは本当に名品で、寒いときや雨の中で何度も助けられました。サッと着けるだけで体感がまるで変わります。心からおすすめできる一品です
  • バフ(ネックゲーター)
  • 手袋
  • ウインドシェル(ウインドブレーカー) ── これが本当に便利

ウインドシェルは、モンベルのウインドシェルジャケット、パタゴニアのフーディニ、アークテリクスのノーバンウインドシェルなど、パッカブル(小さく畳める)な軽量モデルがいろいろあります。

レインウェアでも風は防げるのですが、どうしても動きにくさが出ます。なので、レインとは別に、軽いウインドシェルを1枚持っておくと、行動中の温度調整が格段に楽になります。ここは僕が強くおすすめしたいポイントです。

山小屋用の防寒は「ダウン」が主役

止まって過ごす山小屋では、ダウンが活躍します。

ダウンの最大の価値は、圧縮すると驚くほど小さくなること。暖かさのわりに、ザックの中で場所を取りません。

理想を言えば上下ダウンがあれば山小屋は完璧ですが、下まで持つとやや嵩張ります。なので僕は、上だけダウンにして、下は モンベルのジオラインのタイツで代用することが多いです。上半身は、ダウンの下に パタゴニアのキャプリーン・サーマルウェイトファイントラックのベーシック(ノースリーブ)を重ねます。

ここで大事な考え方を。山小屋用に持っていく服は、「万が一のとき、寒い行動中にも着られるもの」を選ぶこと。山小屋でくつろぐためだけの服ではなく、緊急時には行動用にもなる。一枚で二役こなせると最高です。荷物を増やさずに安全マージンを広げられます。

頭の防寒に「ビーニー」

僕は短髪なので、山小屋では頭が寒い。なのでビーニー(ニット帽)を持っていって、かぶることもあります。地味ですが、頭からの放熱は大きいので、これだけで体感がかなり変わります。

【真夏でも、山は真冬】
ここは初心者の方に本当に知ってほしいところです。都心が30度ある真夏でも、3000m級の山は10度以下が普通です。真冬の都心を思い出してください——あの寒さが、夏の山の上では当たり前に待っています。
山小屋も、暖房が入っていても20度には届かない感じ。隙間風の多い日本家屋で、東京の冬を過ごすイメージが近いかもしれません。床を素足で歩くとひんやりするので、少し厚手の靴下が欲しくなりますし、正直スリッパが恋しくなります(笑)。

こまごましたウェア

  • 帽子(キャップ・バイザー) ── 日射対策
  • サングラス ── 必須です。山の日差しは想像以上に強い
  • 薄手グローブ ── 岩場や鎖場で手を守る。防寒にも
  • カーフスリーブ ── 好みで。ふくらはぎの保護・サポートや日除けに

2. ザックに入れるもの

ザックはトレラン用の15〜20L

パーゴワークスRUSH20に山小屋泊の装備を出した様子

愛用のパーゴワークス RUSH 20。1〜2泊の荷物が、なんとかこれ一つに収まります

容量は 15〜20L あれば1〜2泊いけます。トレラン用は体にぴったり沿うので、走っても歩いても揺れず快適。僕は パーゴワークス(PaaGo WORKS)のRUSH 20 を使っていて、1〜2泊の荷物を、なんとかこれ一つに全部詰め込みます。

「1泊なのに20Lで足りるの?」とよく聞かれますが、ここまで書いてきたように装備を絞れば、ちゃんと入ります。むしろ「この容量に収める」と決めてしまうことが、荷物を厳選するいい縛りになる。大きいザックを買うと、つい隙間を埋めたくなって荷物が増えてしまうもの。小さめを選ぶのは、軽量化の第一歩でもあります。

パッキングは「圧縮」と「防水」が基本

小さなザックに詰めるコツは、コンプレッション(圧縮)です。衣類はコンプレッションバッグで圧縮すると、驚くほど小さくまとまります。

そして同じくらい大事なのが防水。山の天気は急変します。さっきまで晴れていたのに、いきなり大雨になることも珍しくありません。コンプレッションバッグ自体が防水仕様のものも多いのですが、本当に濡らしたくないもの(着替え・ダウン・電子機器)は、それでもさらにコンビニのレジ袋で包んでしまうくらいで、ちょうどいい。二重にしておけば、土砂降りでも安心です。専用の防水スタッフサックを買わなくても、まずは身近な袋で十分です。

きちんとした防水袋を使うなら、僕はいま キャラバン(Caravan)のNEOSHELLドライサック を使っています。軽くて丈夫で、信頼しています。次に買い足したいと思っているのが シートゥーサミット(Sea to Summit)のライトウェイトドライバッグ。定番中の定番で、軽さと使い勝手の評判がいいので、揃えていきたいところです。

レインウェア上下は最重要装備

トレラン用レインウェア上下セットの写真

上下のレインウェア。最近の軽量モデルは、昔の『重い・蒸れる』とは別物です

夏でも、レインウェアの上下(セパレートタイプ)は絶対。雨をしのぐだけでなく、風を防いで体温を守る防寒着としても働きます。暑そうな日でも必ず持つ。これは妥協できません。

僕が使っているのは、上が ノースフェイスのハイパーエア GTX フーディ、下が ストライク トレイル パンツ。どちらも軽くて動きやすく、トレランの動きを邪魔しません。レインウェアは「重い・蒸れる・動きにくい」という古いイメージを持っている方が多いのですが、最近の軽量モデルはまるで別物。良いものを選ぶと、雨の日が苦じゃなくなります。

ヘッドライトは絶対に必要

ヘッドライトは、絶対に必要です。 たとえ「明るい時間だけで下山する」計画であっても、必ず持ってください。トラブルで行動が遅れ、暗くなってからライトがなければ、その場で身動きが取れなくなります。これは命に関わります。

明るさは 200ルーメン以上 を目安に。非常用なので小型で構いませんが、「いざ使おうとしたら電池切れ」だけは避けてください。出発前に必ず点灯確認を。具体的には マイルストーン MS-G2ペツル スイフトLT(PETZL SWIFT LT) あたりが定番です。最近は アラタ AHL-250 も軽くて気になっています。予備電池も忘れずに。

地図はアプリと紙の両方

僕は 山と高原地図(有料アプリ)を使っています。スマホで現在地が分かるので、これが行動中の主役。

ここで初心者の方に知っておいてほしいコツがひとつ。地図アプリは、スマホを「飛行機モード」にしていても現在地が分かります。GPSは電波を「受信するだけ」なので、通信を切っても問題なく働くんです。むしろ、圏外でスマホが電波を探し続けるとバッテリーを一気に消耗するので、山では飛行機モードにしておくのが鉄則。これだけで電池の持ちがまるで変わります。

そのうえで、紙の地図もお守りがてら必ず持っていきます。電池切れに強く、全体を俯瞰できる。アプリと紙、両方あって安心です。

エマージェンシーシート(またはツエルト)はマスト

万が一のビバーク(緊急の野宿)に備えて、エマージェンシーシート、もしくはツエルトは必ず持ちます。

考えたくはありませんが、もし足を骨折するなどして、その場でビバークせざるを得なくなったら——救助を待つあいだ、寒さの中で耐えなければなりません。そのときに体温を守ってくれるのが、この一枚です。貼るカイロを1枚忍ばせておくと、さらに安心。軽くて小さく、数百円。これがあるかないかで、低体温症のリスクが大きく変わります。「使わないのが一番」ですが、お守りとして必ずザックに。

その他

  • モバイルバッテリー ── 1泊は小型、2泊は10000mAh級
  • 充電コード&コンセント(充電器) ── 往復の電車や駅、山小屋で充電できる可能性があるので持っておくと安心
  • ホイッスル ── 万一の合図。ザックに付けっぱなしに
  • ゴミ袋・ジップロック ── 多めに。理由は次で

充電まわりでひとつコツを。往復の電車や公共交通、立ち寄り先で充電できる場面は意外とあります。だからコードと小さなコンセント(充電器)を持っておくと、バッテリーをいざという時のために温存できます。

そのとき効くのが、ケーブルの規格をUSB-Cに統一してしまうこと。スマホもバッテリーもライトの充電も、全部USB-Cでまとめれば、ケーブル1本で何でも賄えてコンパクトになります。「あの機器用のコードがない」というトラブルもなくなる。これも立派な引き算です。


3. 山小屋の支払いは現金が基本(これが一番大事かもしれない)

夏のアルプスにある山小屋の料金表

夏のアルプスの山小屋。多くが現金のみ。到着時刻のルールがある小屋も

装備の話から少し離れますが、ここが初心者の盲点なので強調します。

山小屋は「カード不可・現金のみ」が当たり前。 小銭も含めて、基本は現金で動くと考えてください。

ざっくりの目安はこんな感じです(金額は小屋によって幅があります)。

  • 宿泊費(1泊2食)……16,500円ほど
  • 小屋での食事・飲み物の追加……1,000〜2,000円ほど
  • トイレ(チップ)……100円玉を数枚
  • 急なタクシーなどの予備……これが意外と効いてくる

なので、1泊なら現金2〜3万円、2泊ならさらに余裕を見て持っておくと安心です。そしてカードも必ず一緒に

それと、もうひとつ大人として大事な話を。山では、急なトラブルで見知らぬ方の車に乗せていただくような場面が、本当にあります。そんなありがたい瞬間に、お礼をしたくても現金がないと、これは本当に泣きを見ます。だからこそ、大人は現金を多めに。お守りであり、人としての礼儀のためでもあります。現金とカード、両方がマストです。

ちなみに山小屋の予約は、「1ヶ月前から」「6週間前から」「シーズン開始時に一斉に」など、小屋によってルールがバラバラです。夏は本当に混むので、行きたい小屋が決まったら、早めに予約開始日を調べておきましょう。


4. 食べもの・飲みもの

水は「登り始めで1.6Lくらい」

トレランで使うソフトフラスコとプラティパス

飲む用のソフトフラスコ、予備のプラティパス。役割で分けています

僕が登り始めに持つ水は、役割で分けると、だいたいこんな構成です。

  • 1本目はハイドレーションボトル ── ここに電解質を入れておく。歩きながら少しずつ飲んで、塩分を切らさない
  • 2本目は麦茶か水 ── こちらは純粋な水分補給用
  • 予備は背中に ── 予備の水はザックの背中側に。プラティパス(Platypus)に入れると軽くて、飲み終われば畳めるのがいい

飲む用のソフトフラスコ(柔らかいボトル)には、インナーファクト(INNER FACT)のソフトフラスコを使っています。正直に言うと、使い始めはゴムのような匂いがなかなか強烈で「これは失敗したかな」と思いました(笑)。でも、何度か洗って匂いさえ抜けてしまえば、あとは抜群。飲みやすさも容量も文句なしで、すっかり定番になっています。最初の匂いだけ我慢する価値あり、です。

合計で 1,600mlほど。山小屋や水場で補給はできますが、基本は余分に持っておく。水切れは行動不能に直結するので、ここはケチらない部分です。

行動食は「1時間に1回、少しずつ」

トレラン山小屋泊1日分の行動食と電解質

1日分の行動食と電解質。コーダは1日4〜5本が目安

ドカ食いではなく、1時間に1回くらい、少しずつ糖質と脂質を摂るイメージで食べています。ナッツ、カロリーメイト、柿の種など、軽くてカロリーのあるものが定番です。

ジェルも使えますが、重くなるのが難点。なので僕は、行動食の主役はナッツ系にして、ジェルは非常用に2本だけ持つようにしています。ここぞという疲れたときの最終兵器です。

電解質は「多めに」

夏は汗で塩分がどんどん抜けます。足が攣るのも、たいていこれが原因。電解質(塩タブレット等)はずっと摂り続けるので、数が必要です。多めに用意してください。

僕は塩タブレットも持ちますが、メインで頼っているのが コーダ(CODA)1日あたり4〜5本を目安に持参しています。これくらい持っていくと「足りなくなる不安」がなくなって、こまめに摂り続けられる。電解質は、ケチると一気に足が攣るので、最初は多すぎるくらいでちょうどいいです。

ごはんは小屋で。そして「ちょっとの楽しみ」を

朝・夕は、予約のときに食事付きにしておけば小屋で出ます。自分で用意するのは、歩いている間の行動食だけでOKです。

ただ、山小屋の食事のあと「もう少し何か食べたいな」という夜が必ず来ます(笑)。そんなときのために、柿の種やつまみ系を少し持っておくと、夜の楽しみがぐっと増えます。

そして地味な名脇役が、折りたたみのコップ。歯磨きや、ちょっと水を飲むときに使います。ひとつあると本当に便利なので、僕は必ず持参しています。


5. ケア用品と「エマージェンシーバッグ」

山小屋にお風呂はありません

ここ、初めての方は本当に驚きます。山小屋にお風呂はありません。 汗を流したくても流せない。

なので、汗拭きシート(体拭きシート)で体を拭いて、乾いた服に着替える。これが山小屋での「お風呂がわり」です。さっぱりするし、汗で濡れた服のまま寝て体を冷やすのも防げます。お風呂は、下山してからのお楽しみに取っておきましょう。

応急処置は「エマージェンシーバッグ」にまとめる

トレラン用エマージェンシーバッグの中身一式

僕のエマージェンシーバッグの中身。BICのライター、針と糸、ポビドンヨード、トゲ抜き、綿棒……経験とともに育っていきます

テーピングやばんそうこう、常備薬といった応急処置の道具は、ひとつの小さな袋(エマージェンシーバッグ)にまとめておくと、いざという時すぐ出せます。

特に足の擦れは、トレランでは必ずと言っていいほど起きます。すぐ手当てできるテーピングやばんそうこうを、取り出しやすいところに。

そして大事なこと。この中身は、最初から完璧でなくていい。 回数を重ねるごとに、「これは使ったな」「これは要らなかったな」と、増やしたり減らしたりして、自分仕様に育てていくものです。ここは本当に個人差が大きい。人の真似から始めて、自分の体と相談しながら最適化していってください。

実は、このエマージェンシーバッグの中身こそ、その人の経験値がいちばん表れる場所だと思っています。僕はベテランの方とお会いすると、「何を持っていますか?」と中身を伺うのが楽しみで。いろんなケースを潜り抜けてきた方ほど、道具が少しずつ増えていく。その一つひとつに「なぜそれを持つようになったか」の物語があって、聞いていて飽きません。日々研究、という感じで、これも山の楽しみのひとつです。

ちなみに、僕がいま入れているものを少しだけ挙げると——フリント式のライター(濡れても火花が飛ぶので必ず。これはBICがベストだと教わりました)、針と糸ポビドンヨード(消毒液)を少しだけトゲ抜き綿棒……といったあたり。小さなものばかりですが、いざという時に「持っていてよかった」と思える顔ぶれです。

その他のケア用品

  • 日焼け止め・リップ ── 高所は紫外線が強烈
  • 常備薬 ── 頭痛薬、胃腸薬、持病の薬。ふだん飲むものは必ず
  • トイレ用の小銭 ── 山のトイレは有料が多い。100円玉を分けておく
  • ティッシュ・トイレットペーパー少々 ── 紙が無いトイレもある
  • タオル・手ぬぐい ── 実はこれが万能の一本三役。行動中の汗拭きに使い、下山後のお風呂でも使い、さらにいざという時は止血にも使えます。1枚で何役もこなすので、僕は必ず持ちます。愛用しているのは チャオラス(CHAORAS)。速乾性・吸水性・軽さのバランスが絶妙で、ちょうど「手ぬぐい以上、タオル未満」。この立ち位置がトレランにぴったりで、おすすめです
  • 歯ブラシ ── 山小屋に泊まるなら。コンパクトなものでOK

6. 宿泊と「帰りの服」の話

着替えは「行動着・山小屋着・帰路着」

冒頭の「3つのかたまり」でも触れましたが、ここが軽量化の肝なので、もう一度。

行動着は、基本ずっと同じものを着続けます。 何泊しても替えません。歩けばまた汗をかくので、替えてもきりがないからです。

替えるのは、山小屋着帰路着。そしてこの2つは、別物として用意します。理由はシンプルで、山小屋は冬、下界は夏だから。

夏のアルプスでも、山小屋の夜は真冬の寒さ。だから山小屋着は、しっかり暖かい乾いた一式。ところが下山すれば、下界はうだるような真夏です。山小屋で着ていた防寒着なんて、暑くてとても着ていられません(笑)。だから帰路着は、Tシャツや短パンといった涼しい一式を、別に用意しておく必要があります。

  • 行動着……ずっと着続ける1セット(替えない)
  • 山小屋着……冬の寒さに耐える、乾いた防寒の一式
  • 帰路着……真夏の下界で着る、涼しい一式

問題は、その帰路着を、いかに濡らさないかです。

帰りの服だけは、命がけで濡らさない

帰路用の着替えをジップロックで防水パッキングした様子

帰りの服はジップロックで密封して、ザックの一番奥へ。これで土砂降りでも濡れません

下山したあと、汗まみれ・泥まみれの体で電車に乗るのはつらい。だから帰りに着る一式は別に持つわけですが、これをザックの中で濡らしてしまったら意味がありません。

なので、帰路用の着替えは必ずジップロック等の防水袋に分けて入れる。 これは徹底してください。

僕は帰路の荷物を、ジップロックに入れたうえで、ザックの一番奥か背中側にパッキングしています。行動中はまず使わないものなので、奥にしまっておけば取り出しやすさを犠牲にせず、いちばん濡れにくい位置に置けます。

電車で登山口まで来た方は、登り始める前に、帰路セットを防水パッキングしてザックの奥にしまってしまうのがコツ。歩き出してからは一切触らない。これで「気づいたら濡れていた」を防げます。

下山後の着替えはマスト

繰り返しになりますが、下山後の着替えはマストです。温泉に入ってさっぱりして、乾いた服に着替える。この一連が、疲労回復にも、翌日のコンディションにも効きます。

ただ、いつも都合よくお風呂に入れるとは限りません。お風呂がないときは、トイレで着替えることも多いです。それでも、汗で濡れた服のまま帰るのとは雲泥の差。

僕の帰路の一式は、だいたいこんな感じです。

  • 下着
  • ドライレイヤー(ノースリーブ)
  • Tシャツ
  • 短パン(冷房に弱い人や、電車が長い場合はラン用の長ズボン)
  • サンダル(ワラーチ) ── 下山後に同じ靴を履きたくないとき
  • 全部を入れる大きな袋 ── ここが地味に重要

最後の袋について。下山後は、濡れたリュックごと大きな袋に放り込んでしまうのが楽です。僕はIKEAの青いバッグ(フラクタ)のような、大きくて丈夫なものを使っています。ただし、靴まで入れるとかなりの容量になるので、袋のサイズを間違えないように。

そして、荷物を徹底的に減らしたい方へ。靴下だけ替えて、靴はそのまま履いて帰ってもOKです。完璧を目指さず、自分の許容範囲で調整してください。

ワラーチやルナサンダルのような軽いサンダルなら、ザックの中でかさばりません。下山後の解放感は格別ですよ。

山小屋でぐっすり眠るために

最後に、見落としがちですが効くものを。山小屋は相部屋が基本で、知らない人のいびきや物音、早立ちの人の準備で、思った以上に眠れないことがあります。そこで効くのが、耳栓とアイマスク。このふたつがあるだけで、睡眠の質がまるで変わります。軽くて小さいので、入れておいて損はありません。翌日の行動にしっかり影響するので、僕にとっては立派な「装備」です。


【まとめ】山小屋泊の持ち物チェックリスト

最後に、この記事で挙げた持ち物を一覧にまとめます。出発前にこのままチェックに使ってください。

💡 忙しい方へ: 「いちいち探すのが面倒、サッと揃えたい」という方のために、僕が実際に使っているものにAmazonのリンクを付けておきました。もちろん、お近くの好日山荘やモンベルストアなどで実物を見て選ぶのもおすすめです。

※本記事のリンクにはアフィリエイト広告(PR)を含みます。Amazonのアソシエイトとして、仲野孝明は適格販売により収入を得ています。一部にAmazon以外のリンクを含みます。紹介しているのは、すべて自分が実際に使っているものだけです。

1. 身につけるもの

2. ザックに入れるもの

3. 食べもの・飲みもの

  • 水 合計1,600mlほど(ハイドレに電解質/麦茶か水/予備は背中・プラティパス) → 🛒 プラティパス
  • ドリンクボトル(ソフトフラスコ)/インナーファクト ソフトフラスコ → 🛒 公式サイト
  • 行動食(糖質・脂質/ナッツ・カロリーメイト・柿の種)
  • ジェル 非常用2本 → 🛒 Amazonで見る
  • 電解質(塩タブレット等・多め/コーダを1日4〜5本) → 🛒 Amazonで見る
  • 折りたたみコップ → 🛒 Amazonで見る
  • 好みで:つまみ系(夜の楽しみ)

4. ケア用品(エマージェンシーバッグにまとめる)

5. 宿泊・お金・その他

  • 山小屋の予約(予約開始日は小屋ごとに確認)
  • 現金(1泊2〜3万円目安・多め)+カード
  • 行動着(ずっと着続ける1セット・替えない)
  • 山小屋着(冬の寒さ用・乾いた防寒の一式)
  • 帰路着(真夏の下界用・下着・ドライレイヤー・Tシャツ・短パン等)── ジップロックに入れザックの一番奥か背中側へ・絶対に濡らさない
  • 全部を入れる大きな袋(濡れたリュックごと/IKEAの青い袋等)
  • 下山後の着替えはマスト(お風呂がなければトイレで)
  • 下山後用サンダル(ワラーチ・ルナサンダル/好みで) → 🛒 Amazonで見る
  • 耳栓・アイマスク(山小屋でぐっすり眠るために) → 🛒 Amazonで見る(VENEX)

おわりに──「使い方の歴史」が、あなたの装備を決める

夏のアルプスの稜線からの眺め

この景色に会いに行くための、装備の話でした

ここまで具体的な商品名を挙げてきましたが、最後にひとつだけ。

これは「正解の一覧」ではありません。 僕がいまの体と走り方にたどり着くまでに、たくさん買って、たくさん失敗して、削ぎ落としてきた結果の「現在地」です。

そもそも僕の初めてのトレイルは、ワラーチで52kmを走った白馬の大会でした。あれから8年、装備も体も走りも、少しずつ変わってきました。その変遷をたどると、ここに書いた一式にたどり着いた理由が、もう少し見えてくるかもしれません。

装備は、あなたが山に通うごとに変わっていきます。使ったもの、使わなかったもの。寒くて後悔したもの、重くて要らなかったもの。その積み重ね──いわば「使い方の歴史」が、あなただけの一式をつくっていきます。

だからまずは、ここに書いたものを土台にして、一度山に行ってみてください。そして帰ってきたら、ザックを広げて「次はこうしよう」と考える。その時間が、いちばん楽しいんです。

姿勢が変わると、人生が変わる。
そして、荷物が変わると、山が変わります。

良い山旅を。

姿勢治療家®︎仲野孝明


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