「人間は生きものである」─生命誌研究館で学んだ38億年のつながり
目次
生きものとしての人間──生命誌研究館で感じたこと
「生きものとしての人間」がいきいき暮らす社会づくりを求めてつくられた生命誌研究館。このコンセプトに強く興味を抱き、先日、大阪マラソンに合わせて見学してきました。
※生命誌研究館で展示されている内容は、こちらのiBOOKsでもチェックできます。
ご参考まで。
https://www.brh.co.jp/exhibition_hall/e-book/
生命誌研究館との出会い
生命誌研究館を知ったきっかけは、一冊の書籍でした。
YAMAPの春山さんとご縁をいただいた、『歩く本、出版記念講演会』に参加後、春山さんにご連絡したところ、「最近話しているテーマが載っているオススメの書籍」とご紹介いただきました。
養老先生との対談も素晴らしかったのですが、私が最も感銘を受けたのは、中村桂子さんとの対談で語られた、「人間も生きものである」という視点でした。
生命誌という考え方
生命誌という概念を初めて知りました。
すべての生きものを、地球上に存在する生きものとしてフラットに捉える視点です。
私たちは人間という枠組みで物事を考えがちですが、生命誌では「生きもの」としての視点から人間を考えます。
この考え方を知った瞬間に、私は「人間は動物である」というこれまでの発信内容とリンクするものを感じました。
動物である以上、人間も動かなければならない。
しかし、便利で快適な現代社会に適合しすぎた結果、動けない骨格になり、痛みや不調に悩む人が増えていることを伝え続けてきました。
今回の学びで、もう一つ視点が広くなりました。
「人間は生きものである」という、より本質的な視点はどのようなものなのか。
この言葉が響き、この世界観に触れてみたくなり、大阪マラソン2025のタイミングで研究館足を運びました。
JT生命誌研究館へ──38億年のつながりを感じる旅
JR高槻駅から徒歩10分の場所にあり、美術館のような三階建ての洗練された建物です。
館内には決められたルールはなく、自由に見学できるスタイル。
私の1番の目的は、「生命誌絵巻」をこの目で直接見ることでした。
もちろんサイトにも紹介されています。
https://www.brh.co.jp/
実物を目にしないと、その本質的なメッセージは感じ取れないではないかと思い、足を運ぶことにしました。
この「生命誌絵巻」には、38億年という壮大な時間の流れを生き抜いてきた生物たちのつながりが、一枚の絵として表現されています。
人間だけが特別ではない。
人間もまた、地球上に生きる無数の生きものの一部にすぎないこと。
私たちは、38億年という時間の積み重ねの上に、今、存在している。
それは、動物も植物も細菌も同じなのだということを、生命誌絵巻が教えてくれます。
生命誌絵巻──38億年の生命のつながりを可視化する一枚
現在、地球上に存在する生きものは、38億年という壮大な歴史を背負っています。
その長い時間の中で、多様な生きものが誕生し、互いに関係しながら進化を遂げてきました。
「生命誌絵巻」 は、その歴史とつながりを、一枚の絵で表現した作品です。
・扇のふち(上部):現在、地球上に生きる生きものたち
・扇の要(下部):最初に、地球に誕生した生きもの
この一枚を見るだけで、 「私たちが今ここにいるのは、長い時間の積み重ねの上にある」 ということを、直感的に理解できます。
新・生命誌絵巻──時間軸で見つめる生命の流れ
館内には、新たに制作された 「新・生命誌絵巻」 も展示されていました。
これは、38億年前の生命の起源から、現在までの進化を、時間軸で視覚的に表現したものです。
この絵巻を前にすると、
「私たちは、偶然この時代に生きているのではなく、38億年のつながりの中にいる」
ということが、圧倒的なスケールで実感されました。
そのことを考えると、思わず鳥肌が立ちました。
生命誌絵巻が伝える4つのメッセージ
YAMAPの春山さんと、館長の中村桂子さんとの対談の中で、生命誌絵巻に込められた4つの重要なメッセージ が語られていました。
① 生きものは多様である
動物、昆虫、鳥、魚、植物、そして目に見えないバクテリアまで。
数千万種類もの生きものが地球上には存在しています。
② すべての生きものに共通する仕組み
どんな生きものも 細胞 を持ち、そこには DNA があり、ゲノム(生物のすべての遺伝情報) として、生きるための情報を継承しています。
③ すべての生きものは、40億年前に海にいた細胞を祖先に持つ
「高等生物」や「下等生物」という概念ではなく、すべての生きものが、同じ時間をかけて現在の形になっている ということ。
たとえば、アリ一匹も、私たちと同じ40億年の時間を生きてきた存在 なのです。
④ 人間も、生命誌絵巻の一部である
人間は特別な存在ではなく、他の生きものと同じ時間を生きている一員。
「私が、私が」と個人を中心に考えるのではなく、「私たち生きもの」として捉える 視点が大切。
「私たち生きもの」という視点の転換
現代社会では、「私」という個人の視点が強調されがちです。
しかし、生命誌の視点に立つと、私たちは 「私たち生きもの」 の一部なのだと気づかされます。
そして、実際に訪れることで、生きものとしての自分の在り方 について、より深く考えるきっかけを得ることができました。
私は1人でいるのではなく、「私たち生きもの」の中にいること。
生命誌研究館の46億年を感じる一段、一億年の階段

祖先細胞から現代までの模型

ゲノムという視点

生きものの2つの時間
・38億年前から繋がってきているゲノムという時間
・個体として生きる生きものの時間
2つの時間で、生きものとして、人間として生きる
立体 生命誌絵巻
まとめー「生きものとしての人間」の視点から考える
姿勢の大切さを伝える中で、人間は二足歩行の動物でありながら、歩かなくなり、骨格構造的に身体を蝕んでいると
発信してきました。
中村さんと春山さんの対談の中で、
生きものは、「継続性」・「課程」・「歴史」・「関係」・「多様性」・「進化」であるが、
現代社会は、「利便性」・「効率」・「構造」・「機能」・「圴一」・「進歩」である。
と書かれています。
私自身、診療を通じて、効率を求め、利便性を求め、知識ばかりで、「生きものとしての視点」を失っている方が多いことを実感しています。
生命誌の視点に立つと、私たち人類が700万年の歴史を持つ生きものであり、さらにその前には、38億年もの地球の生命の歴史があることが見えてきます。
その中で、その流れの中で、私たちは、今を生きているだと実感しました。
そして何より、遺伝子(ゲノム)を通じて、すべての生きものと関わっていること。
この事実に気づかされたとき、畏敬の念を感じました。
姿勢治療家として新たな視点
生命誌の視点も大事にしながら、「生きものとしての人間」のあり方を深く探究していきたいと思います。
自分自身が生命誌という物語の中で生かされていること、そんな神話の中で現在を生きている。
と考えると今を生きていることに、感謝で一杯になりました。
国や文化の違いもあり、1人ひとりの個性を重視する社会になっていますが、
誰もが先祖が同じで、38億年戻れば、一つの細胞だった。。
なんて、人類どころか、地球皆兄弟ですね。
生きものとしての人間。
自然の中で生かされている自然観や生命感を学ばせていただきました。
人間は生きものである。
対談の中では、大変わかりやすく、現代社会は、生きもの中心で考え直す必要があることを提唱されていました。
YAMAP春山さんと生命誌研究館 館長の中村桂子さんの視点を生かして、今後も人類の姿勢を掘り下げていこうと思います。
YAMAP春山さん、素晴らしい書籍をありがとうございました!
姿勢が変わると、人生が変わる。
姿勢治療家(R)
仲野孝明
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