足裏のマメから膝の外側まで。380kmで起きた身体の連鎖
目次
ただのランニング記録ではなく、身体を診る人が、自分の身体を使って実験した記録
こんにちは。姿勢治療家の仲野孝明です。
仲野整體100周年記念_7Days飛脚380で、380kmを走る中で、左足裏に小さな違和感が出ました。

最初は、少し擦れている程度。
しかし、その小さな違和感は、日数が進むにつれて、足首、前脛骨筋、そして左膝外側の張りへとつながっていきました。
今回の記録は、ただのランニング記録ではありません。
身体を診る仕事をしている私が、自分の身体を使って確認した、身体の連鎖の記録です。
足裏の小さなマメを放っておくと、身体は無意識にかばいます。
そのかばい方が、足首や膝、股関節、姿勢全体に影響していく。
これは、ランナーだけの話ではありません。
日常生活で靴擦れがある人。
足裏にタコがある人。
膝が気になる人。
腰が張る人。
靴の減り方が左右で違う人。
そういう方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
3日目、雨上がりの天竜川で左足裏に違和感が出た
異変が出始めたのは、3日目でした。
大雨が上がった後、浜松から先へ進み、天竜川を越えた頃。
少しずつ暑くなってきたタイミングで、左足裏に「少し擦れているな」という感覚が出てきました。

履いていたシューズは、アルトラ トーリン8。
ソックスは、ドライマックス マキシマムプロテクション トレイルラン。
大雨の中だったので、さすがに足元はビシャビシャでした。

雨で足裏の皮膚がふやける。
その後、雨が上がり、暑くなって乾燥し始める。
しかし、足裏の皮膚はまだ完全には戻っていない。
この状態が、今回の足裏トラブルの始まりだったと考えています。
濡れた足が乾き始める時、皮膚は摩擦に弱くなる
マメというと、多くの人は「靴が当たった」「靴擦れした」と考えます。
マメができる大きな原因は、湿度と摩擦です。特に皮膚がふやけた状態では、普段よりも摩擦に弱くなります。

しかし今回、私が感じたのは、単純な靴擦れではありませんでした。
大雨で皮膚がふやけた。
その状態から、雨が上がり、暑くなって乾き始めた。
ふやけた足裏の皮膚にシワが寄り、そのシワの部分が圧迫され、摩擦が集中した。
その結果、左足裏に赤みが出てきました。
マメができた場所は、左足裏。
母趾の下側で、やや土踏まずに近い、体重がかかりやすい場所です。
皮膚にシワができ、そのシワになった部分が圧迫され、摩擦によって赤くなっていました。
足裏にマメができたのは、想定外でした。
山岳レースでは当たり前にしている足裏ケアを、今回は省略してしまった
山岳レースでは、私は足裏のケアをかなり大切にしています。
シッカロールを持参し、休憩時には足にまぶして、足裏の湿り気をできるだけ取る。
就寝中には皮膚の状態をできるだけ戻す。
そして再スタート前には、ガーニーグーをしっかり塗り込み、マメにならないようにケアしながら進みます。
長距離では、足裏は命です。
どれだけ体力があっても、足裏が崩れると、走り方も歩き方も変わってしまいます。
そして、その変化は膝、股関節、腰、背骨へとつながっていきます。
ところが今回は、その基本を少し甘く見ていました。
今回使っていたのは、J1クリームでした。
J1クリームが悪いという話ではありません。
問題は、雨、長時間、足裏のふやけ、ソックスの濡れ、そして途中で塗り直さなかったことが重なったことです。
これまでの山岳レースでは、ガーニーグーを途中で塗り直しながら進んでいました。
しかし今回は、J1クリームを塗ったまま、途中で塗り直さずに走り続けていました。
さらに、本来であれば途中で靴下を替えるべきでした。
でも、その時は「まだいける」「替えるのが面倒だ」「もったいない」という気持ちがありました。
今考えると、これが一つの大きな分岐点でした。
足のケアを知らなかったわけではありません。
むしろ、知っていたのにやらなかった。
ここが今回の大きな反省です。
最初に気をつけていたのは、踵・薬指・小指だった
もともと私が気をつけていたのは、踵の上内側、薬指、小指でした。
踵の上内側は、左右とも摩擦が起こりやすい場所です。(若干プロネーションがあるため)
薬指と小指も、比較的靴先や、足の指同士が、当たりやすい場所です。

特に小指は、どうしてもマメになりやすいため、2日目のロングに入る前から予防的にテーピングをしていました。
2日目は71km。
その距離を走る前から、小指や薬指にはあらかじめ対策をしていました。
つまり、予想していた場所には、事前に対策をしていたのです。
ところが、実際に問題が出たのは、想定していた小指や薬指だけではありませんでした。
日数が進むにつれて、当たりが出る場所が変わっていきました。
左足の母趾。
左足の第二指。
右足の中指。
これは、単なる皮膚トラブルではありません。
どこにマメができるか。
どこが擦れるか。
どの指に当たりが出るか。
それは、その時の身体の使い方を教えてくれます。
マメができる場所は、身体の使い方を教えてくれる
踵の内側が擦れるということは、靴の中で足がわずかに傾いたり、前後左右に動いていた可能性があります。私の場合は、若干のプロネーション傾向も関係していたかもしれません。
薬指や小指に当たりが出るということは、足指一本ずつが独立して使いきれていなかったり、靴の中で指同士が当たりやすい状態になっていた可能性があります。
母趾や第二指に当たりが出るということは、着地の時に反った指が当たるか、着地の時に前足部のブレが生じている可能性があります。
つまり、マメや擦れは、単なる皮膚の問題ではありません。

靴下と靴の関係もありますが、足裏と足指は、その時の身体の使い方を記録してくれているのです。
380kmという距離では、その小さな変化が積み重なります。
足裏の違和感。
足指の当たり。
足首の動きにくさ。
前脛骨筋の疲れ。
それらが重なった結果、最終的に膝の外側にも影響が出てきました。
2日目71kmの疲労と、足首の5cmテーピング
もう一つ、今回の連鎖に大きく関係していたと考えているのが、足首のテーピングです。
2日目は71kmでした。
その翌日の3日目には、足首まわり(屈筋支帯)に疲労が出る可能性があると感じていました。
そこで、予防的に足首へテーピングを巻きました。

使ったのは5cm幅の伸縮性テーピングです。
目的は、足首を守るためでした。
しかし、ここにも反省があります。
5cm幅のテーピングは安心感がある一方で、少し締め付けが強くなっていた可能性があります。
本来、足首はただ固定すればよい場所ではありません。
足首は、地面からの情報を受け取り、衝撃を調整し、膝や股関節へ負担を逃がしてくれる大切な場所です。
そこを少し固めすぎると、身体は別の場所で代償します。
足首の背屈制限と、前脛骨筋の疲労
今回、5cmテーピングによる締め付けが、足首の背屈制限につながった可能性があります。
背屈とは、つま先を上げる方向の足首の動きです。
歩く時も、走る時も、この背屈はとても重要です。

足首の背屈が出にくくなると、接地が硬くなります。
すねの前側にある前脛骨筋が、自然に動く中では問題ないのですが、少し制限が加わることで必要以上に疲労したのだと考えています。
そこに、左足裏のマメを避ける動きが加わります。
足裏のマメを避ける。
足首の背屈が制限される。
前脛骨筋が疲れる。
接地にブレが出る。
この小さなズレが、日数を重ねるごとに身体全体へ影響していきました。
5日目、沼津へ向かう途中で左膝外側に張りが出た
左膝の外側が気になり出したのは、200km以上走った5日目でした。
沼津に向けて走っている途中から、嫌な感覚が出てきました。

鋭い痛みではありません。
張りと違和感です。
でも、長距離を走っている時の「嫌な感覚」は、かなり大事です。
痛みになる前のサインだからです。
不思議だったのは、徒歩では気にならないことでした。
登りも平気でした。
下りが少ない区間だったこともありますが、基本的にはフラットの道をランニングしている時に感じていました。
ここが重要です。
下りで強く出る痛みではなく、フラットのランニング中に出る張りと違和感。
つまり、衝撃だけの問題ではなく、繰り返しの接地、蹴り出し、前脛骨筋の疲労、足裏をかばう動き、足首の背屈制限が重なっていたのだと思います。
今回の左膝外側の違和感は、膝から始まったものではありませんでした。
始まりは、3日目の雨上がり、天竜川を越えた頃に感じた左足裏の小さな擦れでした。
膝ではなく、背骨中心の動きに戻した
左膝の外側に張りと違和感が出てきた時、私が意識したのは膝そのものではありませんでした。
まず行ったのは、背伸びです。
背伸びをして、身体を引き上げる。
上半身で動かす。
背骨を中心に、身体全体で前に進む。
これをかなり意識しました。
膝から下は、もともとできるだけ脱力して走っています。
足先で頑張るのではなく、身体全体の重心移動で進む。
今回も、ピッチは変えませんでした。
リズムは保ったまま、ストライドを少し短くしました。
ストライドを短くすることで、一歩ごとの接地のブレを小さくする。
足裏のマメを避けようとして起きる余計な動きを減らす。
前脛骨筋にかかる負担を増やさないようにする。
そして何より、姿勢の意識をより強く持ちました。
足で走っているようで、実際には背骨を中心に身体全体で進んでいる。
380kmの後半、左膝外側の違和感は、そのことを改めて教えてくれました。
背伸びをすると、膝外側の違和感が軽くなった
面白かったのは、背伸びをすると左膝外側の違和感が軽くなったことです。
背伸びをすると、身体の軸が戻りやすくなります。
背骨も、本来の伸びやかなポジションを取り戻しやすくなります。
胸郭が引き上がります。
骨盤の位置が整いやすくなります。
股関節が使いやすくなります。
すると、足だけで頑張る走りから、身体全体で進む感覚に戻っていきます。
膝が気になる時、多くの人は膝だけを見てしまいます。
もちろん、膝そのものの確認も大切です。
しかし、身体は部分だけで動いているわけではありません。
足裏。
足首。
すね。
膝。
股関節。
骨盤。
背骨。
身体はすべてつながっています。
今回の違和感は、まさにそのことを教えてくれました。
今回の膝外側の違和感は、膝だけの問題ではなかった
今回の流れを整理すると、こうなります。
大雨で足裏がふやける。
雨上がり後、暑くなり足元が乾き始める。
靴下交換と塗り直しを省略する。
左足裏の母趾下、土踏まず寄りにマメができる。
2日目71kmの疲労が足首に残る。
足首に巻いた5cmテーピングが、背屈を制限する。
前脛骨筋が疲れる。
足裏のマメを避ける動きが出る。
接地にブレが出る。
5日目、左膝外側に張りと違和感が出る。
つまり、膝外側の違和感は、膝だけの問題ではありませんでした。
始まりは、足裏の小さな違和感でした。

痛みが出た場所だけを見ていても、本当の原因にはたどり着けないことがあります。
これは、臨床でもよくあることです。
膝が痛いから、膝だけを診る。
腰が痛いから、腰だけを診る。
肩がこるから、肩だけを揉む。
それでは、本質に届かないことがあります。
身体は一つながりで動いているからです。
日常生活でも、小さな違和感を放置しない
今回の話は、380kmを走る人だけの話ではありません。
日常生活でも、同じようなことは起きています。
靴の踵がいつも擦れる。
小指が靴に当たる。
足裏にタコがある。
靴底の減り方が左右で違う。
歩いていると膝の外側が気になる。
腰が張りやすい。
こうした小さなサインを、「まあ大丈夫」と放っておくと、身体は無意識にかばい始めます。
かばうこと自体は、防御反応です。
身体は痛みを避けようとしてくれます。
しかし、そのかばい方が長く続くと、別の場所に負担が出ます。
足裏をかばう。
足首の動きが変わる。
膝の向きが変わる。
股関節の使い方が変わる。
骨盤や背骨の動きが変わる。
そして、気づいた時には「なぜここが痛いのかわからない」という状態になることがあります。
小さな違和感は、身体からの大切なサインです。
足裏のマメは、身体の使い方の記録である
今回、改めて感じたことがあります。
足裏のマメは、ただの皮膚トラブルではありません。
どこが擦れるか。
どの指に当たりが出るか。
どの場所にマメができるか。
それは、身体の使い方の記録です。
足裏は、地面と身体が出会う最初の場所です。だからこそ、足の小指たった1本の可動域も大事になるのです。
そこに小さな違和感があるだけで、身体は無意識に逃げ道を作ります。
短時間なら、問題にならないかもしれません。
しかし、380kmという距離では、その小さな逃げ道が何万歩、何十万歩と積み重なります。
その結果、膝や股関節、腰、背骨に影響が出る。
だからこそ、痛みが出ている場所だけではなく、身体全体の使い方を見る必要があります。
最後に|身体は一つながりで動いている
今回の380kmで、改めて確認できたことがあります。
身体は一つながりで動いている。

足裏のマメ。
足首の背屈制限。
前脛骨筋の疲労。
接地のブレ。
左膝外側の張り。
そして、背伸びによる軽減。
これらは、別々の出来事ではありませんでした。
すべてがつながっていました。
足で走っているようで、やはり実際には背骨を中心に身体全体で進んでいる。
膝の違和感を軽減させるためにも、膝だけではなく、姿勢、重心、背骨、上半身の使い方が大切になる。
今回の身体実験は、そのことを改めて教えてくれました。
靴擦れ。
足裏のマメ。
膝の外側の違和感。
腰の張り。
それぞれは別々の問題に見えるかもしれません。
しかし、身体は一つながりで動いています。
痛みが出ている場所だけに原因があるとは限りません。
足裏、足首、膝、股関節、骨盤、背骨。
全体の使い方を見直すことで、見えてくることがあります。
「最近、歩き方が変わった気がする」
「靴の減り方が左右で違う」
「膝や腰に違和感がある」
「足裏のタコやマメが気になる」
そんな方は、一度、自分の身体の使い方を見直してみてください。
姿勢が変わると、身体の使い方が変わります。
身体の使い方が変わると、人生の動き方も変わっていきます。
仲野整體100周年記念として、自らの身体を使って7日間380kmを進んだ7Days飛脚380。
その中で改めて実感したのは、日々お伝えしている「姿勢」と「身体の使い方」の大切さでした。
車や鉄道ができる前には、走ることや歩く移動が当たり前でしたが、
便利すぎる現代だからこそ、人間が動物であることを忘れないようにしなければいけない。
そのために、動かせなくなっているカラダを取り戻し、動物として走れる大人を増やしていきたい。
次なる100年に向け、しっかり進んでいこうと改めて感じました。
足裏のマメ、靴擦れ、膝の違和感、腰の張り。
それぞれは小さな不調に見えるかもしれません。
しかし、身体は一つながりで動いています。
「痛みが出ている場所だけを見ても、なかなか改善しない」
「歩き方や走り方を一度見直したい」
「自分の身体の使い方を知りたい」
そんな方は、一度、身体全体の動きを確認してみてください。
仲野整體東京青山では、姿勢・歩き方・身体の使い方を通して、根本から身体を見直すサポートをしています。
実際に380kmを進む中では、マメを守るためにテーピングも何度も工夫しました。
その具体的なテーピングの変化については、こちらの記事で詳しくまとめています。
姿勢が変わると、人生が変わる。
姿勢治療家
仲野孝明

仲野孝明(なかの たかあき)は、姿勢治療家®。1926年(大正15年)創業、100年の歴史を持つ仲野整體東京青山の四代目院長を務める。「姿勢が変わると、人生が変わる」を信条に、正しい姿勢と身体の使い方を伝える施術・指導を行う。
著書は7冊。代表作『調子いい! がずっとつづく カラダの使い方』(サンクチュアリ出版)ほか、姿勢と健康に関する著作を通じて、多くの読者に身体の使い方を伝えてきた。企業の健康支援にも力を注ぎ、法人向けに姿勢と身体の使い方を伝える「日本のオフィス健康プロジェクト(NOK)」を立ち上げた。
自身も38歳からランニングを始めた実践者であり、サハラ砂漠マラソン、アタカマ砂漠マラソン、UTMB(160km)、トルデジアン(330km)、IRONMANトライアスロンなどの過酷なレースを完走。臨床の知見と自らの身体実験を融合させ、ブログ・YouTube「姿勢の医学」・PODCAST「姿勢が変わると、人生が変わるラジオ」などで姿勢と身体の使い方を発信し続けている。





















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